独立系SIerの方が下流工程の豊富な経験を活かして、ユーザー系SIerに中途で入社して、ステップアップしていく方法についてお話しします。
下流工程から上流工程への脱却です。
結論から言うと、独立系SIerの人は下流工程をこなしつつ、上流工程を習得することで、ユーザー系SIerにステップアップすることは可能です。
今回は、独立系SIerの人が、ユーザー系SIerへ転職する方法やノウハウを、アクションプランに落とし込んで説明します。
独立系SIer以外の方にも、参考になる内容です。
独立系SIerの人の悩み
「今よりもっと安定した収入、処遇を手に入れたい」
「自分で主体的に仕事がしたい、もっと上流工程の仕事がしたい」
「客先常駐は肩身が狭いなあ、自社の名刺を持って、自社のオフィスで働きたい・・・」
「もうお客さんのいいなりは嫌だ・・・」
「独立系SIerからユーザー系SIerへ転職するためには、どうしたらいいのか?」
そんな疑問にお答えします。
私は、IT業界25年。経験してきた会社は3社、そのすべてがユーザー系SIerです。
これまで、常駐していた独立系SIerの方が、ユーザー系SIerに転職するケースを何人も見てきました。
今回はその経験からお話します。
ユーザー系SIerについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>IT業界においてユーザー系SIerは安定性抜群、イチオシです!
>>IT業界 ユーザー系SIerのメリットとデメリット【実体験よりアドバイス】
目次
独立系SIerからユーザー系SIerへ転職する方法、下流工程から上流工程への脱却
独立系SIerからユーザー系SIerへ転職する方法、下流工程から上流工程への脱却について
転職の対象年齢は、最初におことわりしておきますが、転職可能な年齢は30歳前半までの方を前提にしています。
35歳を過ぎると、それ以上の年齢の方の転職の可否は、自己が取得しているスキルの市場価値によります。
20歳台なら、転職は全然問題なしです。
ユーザー系SIerへの転職するためのアクションプランは、以下のとおりです。
アクションプラン
①ユーザー系SIerが求めるニーズ、スキルを理解
②スキルを自己分析
③アクションプランを実行
④転職活動
⑤ユーザー系SIerへ転職
それでは、ひとつづつ順に解説していきます。
①ユーザー系SIerが求めるニーズ、スキルを理解
独立系SIerから、ユーザ系に転職するためには、
ユーザー系SIerの社員に「この人欲しい!」と思わせること、つまりユーザー系SIerに必要なニーズ、スキルを身につけることです。
上流工程のスキル
⇒基本計画、要件定義、概要設計などの上流工程の経験スキルです。
転職する場合、上流工程のスキルは必ずしも必須でなく、ユーザー系SIerに「入社してから習得します」でも大丈夫です。
ただし、上流工程ができる能力の下地(コミュニケーション力、リーダシップ力など)が求められます。
専門分野のスキル
⇒システム開発、DB、サーバ、ネットワーク、エンドポイントなどの、現場経験に基づく専門分野のスキルが必須です。
自分の強みが開発なのか、運用なのか、システム企画かをはっきり見える化してください。
プロジェクトマネジメントのスキル
⇒プロジェクトマネジメントスキル(プロマネ力)とは、システム開発の各工程における作業を円滑に遂行するための管理手法です。
具体的には、スケジュール管理、予算管理、リソース管理、品質管理、リスク管理などです。
プロマネ力は若手エンジニアの方は必須のスキルではありませんが、30歳台の方はリーダ候補としてプロマネ力は必須です。
情報処理資格試験の資格取得
⇒独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施している国家資格の情報処理資格試験を重視するユーザー系SIerは意外と多いです。
資格取得奨励金を支給している会社は、特にこの傾向が強いです。
逆に、ユーザー系SIerの会社の弱みは2つです。
下流工程に弱い、現場作業に基づいた経験が少ない
⇒コスト削減などで、プログラミング・単体テストなどをオフシェアで社外や海外の会社に発注するユーザー系SIerが多いです。
なので、プログラミングなどの下流工程の経験が少なく、新入社員研修で少しプログラミングを2カ月程度経験するレベルです。
ユーザー系SIerの社員は、圧倒的に下流工程の経験が少ないため、上流工程しかやったことのない社員が大半で、下流工程の管理に悩んでます。
例えば、システム開発で簡単なバグ修正に「1週間かかる」と下請けの独立系SIerの方に言われると、それをそのまま鵜呑みにして、上に報告してくることがあります。
私が技術的に問い詰めると、半日で修正できるレベルでした。
大半のユーザー系SIerの社員は、システムの下流工程における経験が少なく、その内容の理解に乏しいので、自ら下流工程の精査ができないのです。
下流工程に裏打ちされた上流工程ができない
⇒ユーザー系SIerは下流工程の技術的なノウハウがないため、下請けの下流工程の会社の言いなりです。
障害や問い合わせ対応にも、下流工程の会社に頼る場面が多くなってきています。
実は、この「下流工程の経験が少ない」というユーザー系SIerの弱点に、実は独立系SIerの方のユーザー系SIer転職に対する活路があります。
②スキルを自己分析
独立系SIerの方は、自己のスキルの強みと弱みを一度振り返ってみてください。
私の周りに常駐している独立系SIerの方を見ていて感じることは、以下のポイントに強み、弱みが見受けられます。
独立系SIer強み
- 現場経験、下流工程(プログラミング、テスト)に強い。
- 実作業を経験しているので、正確な開発作業のスケジュールが見積もれる。
- システムの中身を理解することができるので、障害対応力に優れている。
独立系SIer弱み
- 上流工程の経験が少ない(基本計画、要件定義、概要設計のノウハウに乏しい)。
- プロジェクトマネージメント力(プロマネ力)が弱い。視点が低い。
- リーダシップ、コミュニケーション力が弱い。統率力がない。
- 情報処理資格試験を資格取得していない人が多い。
③アクションプランを実行
それでは、独立系SIerの方の弱みをカバーするための方法を説明します。
1年以内に以下のスキルを習得して、転職活動を開始してください。
上流工程の知識を習得する方法
- 日々の業務において、客先から渡される上流工程の資料を研究する(その資料を見て、自分で独力で作成できるか?)
- 自分ならどう作成するかをシミュレーションして訓練する(作成する方法を自分なりに模索する)
プロジェクトマネージメント力を向上させる方法
プロジェクトマネージメント力(プロマネ力)とは、期間内に決められた目的を達成すること意味しており、ユーザー系SIerではこれができないと話になりません。
具体的なプロマネ力の向上方法は、業務におけるスケジュール管理、問題課題管理、作業見積もり、原価見積もり管理を自ら意識して実施する。
プロマネ力の向上については、こちらをご覧ください。
>>プロジェクトマネージメント スキル ツール(失敗しない方法)
リーダシップを身につける
客先でリーダ的な動きができるように、自社の業務のプロジェクトの進捗管理、課題管理を積極的に経験する。
客先の責任者との交渉窓口、自社への連絡調整の業務を経験することで、コミュニケーションを通じたリーダシップを身につける。
客先で自ら機会を求めて、業務において発生するトラブルには積極的に復旧作業に参加することで、臨機応変な対応力を習得する。
情報処理資格試験の資格取得する
最低でも、「基本情報技術者試験」、できれば自己の専門分野に関連する「高度情報処理」で何か一つ資格を取得しておくことが望ましいです。
職務経歴で、自己のキャリアをポートフォリオするにしても、情報処理資格試験の公的資格が必須というユーザー系SIerは、まだまだ多いです。
大手金融、保険などのユーザー系SIerだと情報処理資格試験の資格は重視されます。がんばって200時間勉強してください。
まだ、情報処理資格がない人は、こちらをご覧ください。
>>基本情報技術者試験のシンプルな勉強法、初心者でも大丈夫!
転職サイトで定期的に自分の市場価値を知る
転職サイトに登録して、自分のスキルの市場価値を定期的に確認することをオススメします。
もし自分に足りないスキルがあれば、そこを重点的に埋める努力もできるし、逆に市場価値の高いスキルを知ることで、そこに自己学習を注力することができるので効率的です。
あくまでも自分が転職希望する会社を高いレベルに設定しておいて、転職サイトの担当者が勧めてくるどうでもいい会社に安易に妥協しないことです。
もしあなたが気乗りしない会社の転職を無理強いしてくる転職サイトは、遠慮なく断りましょう。
転職サイトについては、、こちらをご覧ください。
>>IT業界に強い転職サイト・転職エージェント
④転職活動
登録している転職サイトを積極的に活用して、転職活動を開始します。
転職活動において、ユーザー系SIer特有のいくつかの注意するポイントがあります。
詳しくは、「IT業界 ユーザー系SIerのメリットとデメリット【実体験よりアドバイス】」をご覧ください。
前提として、ユーザー系SIerが求めるニーズ3つのポイントを理解してください。
- ユーザー系SIerが求める人物像
- コミュニケーション力のアピール
- 豊富な下位工程の経験を売りにする
順に説明していきます。
ユーザー系SIerが求める人物像
ユーザー系SIerは安心、安全、信頼を求める社風が多いです。
なので、何事も手堅く、長く仕事をしてくれる人を望む傾向が強いです。
自分のこれまでの挑戦してきたキャリアをアピールしつつも、「この会社で長く仕事がしたい!」のアピールが重要です。
できれば、ここをステップに「また違う会社に転職したい!」などとは言わない方が無難です。
コミュニケーション力のアピール
親会社、グループ企業など幅広い関係性を持つことができる人を求めるため、コミュニケーション力は必須です。
自分のコミュニケーション力をアピールしてください。
プロマネ経験、リーダ経験が重要です。
豊富な下位工程の経験を売りにする
これまで経験してきた設計構築、プログラミング、テストなどの下流工程に裏打ちされた技術力をアピールしてください。
ユーザー系SIerの社員は、下流工程の経験者が少なく、実作業を行うメーカ系SIer、独立系SIerの方々と、技術的な話ができなくて困っているケースが多いです。
そこを技術的なギャップを自分が埋めることで「貴社に貢献したい!」感を出すと効果的です。
決めセリフは「これまで自分が経験してきた技術と経験を御社の業務に活かして、上流工程を目指していきたい!!」です。
具体的な転職活動の方法については、こちらをご覧ください。
>>ITエンジニアの転職活動の進め方 【失敗しない実体験に基づく本音の話】
⑤ユーザー系SIerへ転職
めでたく、ユーザー系SIerへ転職です。
転職が決まった後は、なにかと不安やストレスを感じるものです。
転職後のそんな不安やストレスを解消するための解決策については、こちらをご覧ください。
>>転職後の不安やストレスを解消するためにやること、解決策
まとめ
何度も言いますが、ユーザー系SIerは、下流工程の技術力不足に課題を抱えています。
それは、ユーザー系SIerは、付加価値の低い、単価の安い下流工程作業を下請けに流すことが多いので、自然と下流工程の作業をやらなくなる社員が多くなります。
そうなると、下流工程の理解の乏しい社員が多くなり、上流工程はわかるが、手を動かす下流工程に苦手意識を持つようになります。
そこの弱点をユーザー系SIerは、中等採用で補完したいのです。
だから転職活動においては、独立系SIerの方は、ユーザー系SIerの課題である「下流工程の理解すること」を解決すること、かつ、上流工程に対応できる能力、またはその素養(下地、伸びしろ)があることをアピールすることが重要なのです。
そのための準備
- 上流工程の知識を習得
- プロジェクトマネージメント力を向上させる。
- リーダシップを身につける
- 情報処理資格試験の資格取得しましょう
- 転職サイトで定期的に自分の市場価値を知る
IT業界において、学歴も社歴も関係ありません。必要なのは自己のスキルのみです。
独立系SIerの方は、下流工程を経験、理解しているという強みをフル活用して、ユーザー系SIerへの転職に向かって、ぜひステップアップを目指してください!
というわけで、今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。