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IT業界の仕事

IT業界ユーザー系SIerのメリットとデメリット【実体験】

2020年10月25日

IT業界における、ユーザー系SIerは超ホワイト企業であり、ブラック企業でもあります

もし、あなたがユーザー系SIerを単なる安定指向だけで選ぼうとしているなら、止めた方がいいです!

今回は、ユーザー系SIer一筋25年在籍している筆者が、内部にいた者にしか見えない、ユーザー系SIerのメリットとデメリット、表と裏、光と闇を説得力のある実体験を交えて説明します。

IT業界におけるユーザー系SIerのメリットとデメリット、実体験なので説得力あり

以前に、IT業界においてユーザー系SIerは安定性抜群で、転職先としてイチオシであることを述べました。

詳しくは、>>IT業界においてユーザー系SIerは安定性抜群、イチオシです!を見てください。

 

IT業界に就職、転職を考えているが、ユーザー系SIerってどうなんだろ?

ユーザー系SIerのメリットとデメリットを知りたい。

 

 

そんな疑問にお答えします。

私は、IT業界25年。経験してきた会社は3社、そのすべてがユーザー系SIerです。

ユーザー系SIerの表と裏を知り尽くした私の実体験からお話します。



ユーザー系SIerのメリット

働く社員の視点で説明します。


安定性

親会社から安定的に仕事が来るので、事業継続性は安定しています。

親会社の中長期計画にもとづいて、業務計画が立てられ、それによってシステム案件が実施されます。

仕事がなくて暇ってことはないです。


上流工程を経験できる、企画力がつく

親会社の業務計画にそって、システムで実現させるためのシステム企画、基本構想、基本計画、要件定義などの上流工程をユーザー系SIerは担当します。

こんな工程は、メーカ系SIerや独立系SIerではなかなか体験できないことで、そんな貴重な経験ができるのはユーザー系SIerの強みです。

また、システムを直接利用してるユーザや一般のシステム利用者からの問い合わせ対応などが多く発生し、ユーザサポート力を身につけることもできます。


給与高め

親会社の経営状態によりますが、メーカ系SIerと同レベルで、平均年収は600万円前後です。

私はユーザー系SIerで45歳で年収1,000万円を超えました。

ユーザー系SIerは、親会社の給与体系に準じており、親会社の2割減ぐらいのレベル、まだまだ年功序列が強い感はあります。

しかし、外資系のように年間で人事評価の下位5%がクビになるような、シビアでギスギスした世界より、私は日本的企業の方が性に合っているのでそんなに不満はなかったです。


休日、福利厚生は大企業並み、残業少ない

年次休暇取得の促進や福利厚生は、親会社とほぼ同一なので安心です。

福利厚生は、健康保険、健康診断、インフルエンザ予防接種の補助金の助成などがあります。

 

残業規制も厳しいです。違反すると報告書と再発防止策を提出させられ、残業抑制の仕組みは近年かなり厳格になっています。

私が若い頃は、「仕事は期限までに死んでもやれ!」でしたが、今は本当に死んでしまうので、「残業時間は規定内にしろ!」となっています。時代は変われば、変わるものです。


女性が働きやすい

政府の勧告や奨励はすぐ実行されます。

子育て中の時短勤務や、育休取得など柔軟な対応制度が整備されている場合が多く、女性が結婚出産後も継続して働ける環境が整っている会社が多いです。

 

大企業ならともかく、中小規模のSIerで、女性が結婚出産後も長く働くのはかなり厳しいでしょう。

なぜなら、ある程度余剰人員を抱えられる経営基盤がないと、育児への理解を共有できる職場環境を維持するのは困難だからです。

女性が長く、余裕を持って、IT業界で働くなら、ユーザー系SIer一択です。

 

また、最近は女性登用ブームもあり、実力が同じだと女性の方が役職に抜擢される傾向があります。

大企業ではないのですが、大企業のような顔をするので、社会的な風潮をいち早く取り入れることが多いです。女性を大事にする会社的なイメージを出すのも最近のユーザ系SIerの特徴です。(2024年3月追記)

 


職場の雰囲気、社会的信用性

全体的におおらかです。利益追求でギスギスしていないので、オフィスの雰囲気に余裕があります。

配属先にもよりますが、私が経験したユーザー系SIer3社に共通してますが、雰囲気だけは大企業と同じという会社が多いです。

また、社会的責任を重視します。親会社の看板を掲げているので、不祥事には神経質なぐらい過敏です。

 

もし、社員がメンタルで休職しても、大企業並みに会社が相当な期間の面倒を見てくれます。

その制度を悪用して、中にはわざとメンタルを装っているのではないか?と思える人がいるくらいです。

たぶん、ブラック企業として訴えられると、世間的な信用に関わるのも一因としてあるからでしょう。


ユーザー系SIerのデメリット


ITの技術力習得が困難

上で説明したように、上流工程のキャリアは積めるものの、プログラミング、テストなどの下流工程を経験する質と量が圧倒的に不足します。

これは、付加価値の低いと見なされている下流工程は、作業単価の安い常駐している協力会社(独立系SIer)などに、外注した方がコストが削減できるからです。

 

ユーザー系SIerの社員は、上流工程ばかりしていると、IT技術の進歩に伴う下流工程の現場作業の変化について行けず、自分自身の現場力低下につながります。

これでは、下流工程を意識した上流工程でのシステム設計ができなくなり、技術力低下のリスクがあります。

 

いちいち、下流工程を担当している協力会社(外部の会社)に聞かないと、作業見積もりができなかったり、自分でシステムを作れないので、作業イメージがわかず、上流工程での設計に支障がでます。

下流工程を担当している協力会社(外部の会社)の方が言っていることを鵜呑みにしたのでは、適切かつ正確なスケジュール、コスト、費用見積もりができません。

なぜなら、下流工程の外部の協力会社(メーカ系、独立系SIer)とは、スケジュールとコストに関する利害が対立するからです。

 

昔は、今ほど協力会社の派遣や常駐への依存度が少なく、ユーザー系SIerの社員が下流工程も担当していました。

私も死ぬほどプログラミングしましたが、今はほとんどのユーザー系SIerの社員はプログラミングをしません。

したがって、ユーザー系SIerの社員が技術的に空洞化しつつあるのは、深刻な問題です。

 

当然、下流工程(プログラミング)を経験していないユーザー系SIerの社員の市場価値は微妙です。

ユーザー系SIerの社員本人がそれを自覚して、下流工程を経験する機会を積極的に作り、常にIT技術者としての鮮度を保持していく努力が、会社として、個人として求められます。


モチベーションが低い

親会社から安定的に仕事が流れてくるため、自然と仕事を取るモチベーションは低くなり、個人としてもやる気にバラツキが出ます。

仕事をバリバリやる人、あまりやる気のない人。それぞれです。

 

親会社のように年功序列的なところがあるので、成果主義も限定的となると、やる気のない人は適当な仕事になりがちです(まるで公務員のように)。

たまに、出向者が朝から新聞読んでいたり、部下に指示ばかりして、自分は何もしない。

そんな人を見ていると、こっちまでモチベーションが下がります(人は人、自分は自分で意識防衛してますが)。

 

また、親会社が大きいと予算の枠に仕事があてがわれるので、予算を有効活用する、つまり「使い切る」みたいなことになります。

コストありきの仕事になり易く、技術力でコストをかけずに、物事を解決するモチベーションが上がりにくいです。


親会社からの出向者の取り扱い

あとは、ときどき親会社からの出向者に悩まされます。

もともと親会社のお仕事をするつもりで入社した出向者が、ITに興味を持つことは少ないので、当然ITの仕事にやる気のない人になります。

やる気のない親会社の出向者が上司になると最悪です(中には超絶優秀で、すごい出向者もいますが)。

 

出向者は、ユーザー系SIerの子会社に出向してきて、その子会社のために粉骨砕身、責任を持って面倒をみてくれる優秀な人もいますが、中には親会社の方にばかり向いて、子会社を見下して、「おまえらやっとけ!」的な人もいます。

そんな状況に嫌気を感じて、ユーザー系SIerから、他のIT会社へ転職する人もいるくらいです。


親会社対応、親会社の甘え体質

親会社から安定的に仕事が流れてくることによる、もうひとつの弊害は、親会社の対応と甘え体質です。

まず、親会社はユーザー系SIerに対して、事業目的の達成のためにシステム開発運用を依頼してきます。

その依頼は、妥当な内容であればいいのですが、無理ゲーな場合はやっかいです。

 

独立系SIerなど普通の会社であれば、受注を断ればいいのですが、ユーザー系SIerは受けざるを得ません

その場合、親会社の命令は絶対なので、無理矢理、やれる方向でユーザー系SIerは努力します。

なんとか死ぬ気でやって、乗り越えられればいいのですが、中には崩壊するプロジェクトもあり、何日も徹夜して、家に帰れない状況になったこともありました。

 

そうなると会社も個人もかなり消耗し、中にはメンタルをやられることもあります。

親会社にとって、ユーザー系SIerはシステム対応の最後の砦(とりで)的なところがあるので、無理を言ってくるのです。

ユーザー系SIerが親会社にモノ申すのはなかなか困難で、できないことを「できない」と言うのは難しく、勇気のいることです。

 

ついつい、同じグループ会社の一員として、親会社の甘えに対して、「なんとかしてやろう!」と思う気持ちが出てしまいます。

過去に発生したみずほ銀行の大規模なシステム障害なども、そういった親会社の無理な要求が遠因だったのではないかと、日経の記事を読んで個人的に感じました。

「ユーザー系SIerのメリット」の「安定性」や「職場の雰囲気」とは、真逆なことを述べてますが、ユーザー系SIerのいい面とは、また違った顔、実態があるということを、知っておいてください。


親会社の都合で経営環境は変わる

ユーザー系SIerは、その経営を親会社に依存しています。

なので、親会社の都合でユーザー系SIerは他社に売り飛ばされることもあります。

 

事実、東日本大震災の時に東京電力の経営環境は大きく変わり、システム子会社が売られた事例があります。

その時は、東京電力の経営合理化のため、2013年にユーザー系SIerであるテプコシステムズを会社分割し、一般管理系業務の部隊(約700名)を日立系列の傘下としました。

 

事実として東京電力のケースのようなことが起こりえます。

なので、ユーザー系SIerに入社しても、万一に備えてIT技術者として常に研鑽を積み、自己の技術力の市場価値を高めておくことは必要です。



 


ユーザー系SIerに転職したい人へのアドバイス

結局は自分しだいです。就活や転職を検討する上で、何に価値の重きを置くかで会社選びは変わります。

ユーザー系SIerのいい面、わるい面を理解したうえで、なおもユーザー系SIerに転職したい人へのアドバイスは以下のとおりです。


親会社の安定性は重要

ユーザー系SIerに入社するなら、経営基盤、経営環境の安定した親会社の系列を選ぶこと

これは働く上で安定した職場環境を確保するのは、精神的な面で重要です。

親会社は社会インフラとして安定的な基盤をもっている会社を選択した方がいいです。

とは言っても、今は東京電力が傾く時代なので、なんとも言えませんが。


自分の市場価値は自助努力

たとえユーザー系SIerに入社しても、自己のIT技術力、キャリアは常に向上させることです。

同じことを2年やらないぐらいの気持ちで、社内でステップアップを図ってください。

ITの技術力はその人しだい、ユーザー系SIerに入社してもそれはゴールではないです。


高度情報処理技術者試験の資格は重要

大企業の親会社は、実は「情報処理資格試験資格」が大好きです。ユーザー系SIerも同じです。

転職者は、自分の専門分野に関連するところで、「高度情報処理技術者試験」の資格を最低でも1つは取得しておくことをオススメします。基本情報技術者試験だけでは不足です。

 

「高度情報処理技術者」の資格があると、転職活動にはかなり優位になります。

ユーザー系SIer入社後も、「高度情報処理技術者」の資格取得は昇進昇格にも影響があります(絶対ではないですが)。

私が転職活動した当時は、高度情報処理の資格を3つ持っていたので、書類選考で落ちたことがないです。

詳しくはこちら
【初心者でも大丈夫】基本情報技術者試験のシンプルな勉強法

続きを見る


まとめ


ユーザー系SIerはトータル的に安定、全体的にホワイト

これまで説明してきたように、25年間ユーザー系SIerに勤務してきて、自分が感じたことをありのまま書きました。

今回は、どちらかと言うと、ユーザー系SIerのデメリットの部分に多くボリュームを割きましたが、悪い部分を知ることで、かえって良い面がより理解できます。

 

よく、他のサイトのブログに、ユーザー系SIerは「技術力が低い」、「親会社から出向者の上司が面倒、やる気が持てない」、「仕事が安定すぎてつまらない」などの声を聞きますが、それはほぼ事実です。

ですが、人の価値観はそれぞれです。

 

ユーザー系SIerは、トータル的には、ブラック企業の対極にある、ホワイト企業の部類に入ります。

自分のワークスタイルをどの価値に重きを置くのか?

仕事と家庭、趣味との両立、ワーク・アンド・ライフバランスをどうとらえるのか?

長い人生、自分のライフスタイルに合わせて会社を選択するとなると、ユーザー系SIerの評価とその結果は、十人十色です。

 

自分は、たまたま安定した親会社に恵まれて、経営環境の比較的安定した会社人生を生きてきました。

総じて言うと、この25年間のIT系サラリーマンとしては、自分は運がよかったと思います。

私の経験が、そのまま皆さんに当てはまるとはかぎりませんが、ユーザー系SIerについての参考になれば幸いです。

次回は、「独立系SIerからユーザー系SIerへ転職する方法、下流工程から上流工程への脱却」について解説します。

 

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最後まで、お読みいただきありがとうございました。







 

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